串かつ屋のM&A・居抜き成功ガイド【買い手・売り手の相場・リスク解説】

飲食・食品

はじめに|串かつ屋M&Aが注目される背景

「後継者がいないまま、このまま閉めるしかないのか」「いい立地の串かつ店を買収して多店舗展開したいが、相場感がわからない」——そうした悩みを抱えるオーナーや投資家が急増しています。

コロナ禍からの回復が進む中、B級グルメの代表格である串かつ・串揚げ業態は再び注目を集めています。関西発の文化として根付いてきた串かつは、いまや首都圏でも需要が拡大し、チェーン化の波が押し寄せています。その一方で、50〜60代のオーナーが後継者不在のまま廃業を迫られるケースも増加しており、串かつ屋M&A・居抜き・事業承継への関心はこれまでにない高まりを見せています。

本記事では、買い手・売り手の双方が知っておくべき相場感、業種特有のリスク、成功のための実務ポイントを網羅的に解説します。


串かつ屋のM&A市場規模と現在の動向

業態の成長と市場環境

串揚げ・串かつ業態は、居酒屋市場の細分化・専門店化の流れに乗り、2010年代以降に急速に存在感を高めてきました。「串カツ田中」に代表される大手チェーンの全国展開が業態認知を押し上げ、関西ローカルのイメージから脱却しつつあります。

コロナ禍ではアルコール提供規制の影響を大きく受けた業態のひとつでしたが、2023年以降は客足の回復とともに売上も持ち直しており、一店舗あたりの年商は1,500万〜3,000万円帯が主流です。利益率は立地・業態運営の効率によって差があるものの、概ね15〜25%程度が標準的な水準とされています。

チェーン化トレンドと買収需要の高まり

大手外食グループにとって、串かつ業態は「客単価2,000〜3,500円・回転率が高い・調理オペレーションが標準化しやすい」という三拍子が揃った魅力的なセグメントです。スタンドアロン型の個人店を取り込み、自社ブランドへ転換するM&A戦略は実際に複数の大手が採用しており、案件数は年々増加傾向にあります。

こうした市場環境の変化を理解した上で、次は具体的な「買い手」の属性と目的を掘り下げていきましょう。


串かつ屋M&Aの買い手は誰か|購入目的別分析

大手チェーン・居酒屋グループによる買収

最も積極的な買い手層は、すでに串かつまたは居酒屋業態を複数店舗運営している大手・中堅チェーンです。彼らが個人店のM&Aに動く最大の理由は、「立地の取得コスト削減」と「既存顧客の引き継ぎ」にあります。

新規出店の場合、スケルトンから店舗を作ると内装・設備だけで1,500万〜3,000万円以上の初期投資が必要になります。一方、居抜きによるM&Aであれば同等以上の設備を持つ店舗を500万〜1,500万円程度で取得できるケースもあり、コスト効率が格段に高い。加えて、調理システムの標準化・セントラルキッチンとの連携による原価率改善も見込めるため、チェーン側にとっては一石二鳥の戦略です。

飲食FC企業・投資ファンドの動き

外食特化のFCオーナーや中小ファンドも、串かつ業態を「安定的なキャッシュフロー源」として評価しています。利益率15〜25%という数字は、他の飲食業態と比較しても高水準であり、複数店舗をポートフォリオとして保有することで投資効率が高まります。

ファンドの場合、取得後2〜5年での売却(EXIT)を前提に、収益改善・ブランディング強化を実施するケースが多く、単純な買収ではなく”事業再生型M&A”の色彩を帯びることもあります。

買い手が重視する評価ポイント

買い手が最も重視するのは、以下の3点です。

  1. 立地・商圏の質:駅前・繁華街・オフィス街など、安定的な集客が見込める立地か
  2. 既存顧客層と営業年数:5年以上の営業歴と固定客の厚みは、ブランド継続性の証明になる
  3. 有形資産(居抜き設備)の状態:フライヤー・排煙設備・カウンターなど串かつ特有の設備が使用可能かどうか

なお、「オーナーシェフの調理技術」は買い手にとってプラスよりもリスク要因と見なされることが多い点に注意が必要です。属人的なスキルへの依存度が高いほど、評価額は割り引かれる傾向があります。

買い手のニーズを把握したところで、次は実際の売却価格の算定方法を見ていきます。


串かつ屋の売却相場|年買法・EBITDAで読み解く

主要なバリュエーション手法

串かつ屋のM&Aでは、主に以下の2つの評価手法が使われます。

年買法(簡易評価)

スモールM&Aで最も一般的な手法です。計算式は下記の通りです。

売却価格 = 時価純資産 + 営業利益 × 年数倍率

串かつ業態の年数倍率は一般的に2.5〜4.0倍が相場です。立地・客層・営業年数・設備状態が良好であれば4倍前後、属人性が高い・設備が老朽化している場合は2.5倍前後に落ち着くことが多い。

計算例:
– 年間営業利益:300万円
– 時価純資産(設備・什器等):200万円
– 年数倍率:3倍と仮定

売却価格 = 200万円 + 300万円 × 3 = 1,100万円

EBITDA倍率法

法人格での売却や、ある程度規模のある店舗では、EBITDAベースの評価も使われます。串かつ業態のEBITDA倍率は4〜6倍が標準的です。

売却価格 ≒ EBITDA(税引前利益+減価償却費) × 4〜6倍

EBITDAが500万円の場合、2,000万〜3,000万円の評価となります。複数店舗を束ねた形での売却や、のれん価値が明確な場合にはさらに上振れすることもあります。

DCF法について

将来キャッシュフローを割り引くDCF法は、個人飲食店レベルのM&Aではデータ整備の問題から使われることは少ないですが、FC権付きの多店舗案件や大型法人案件では採用されるケースがあります。

居抜き評価の特殊性

串かつ店の場合、業態特性上「フライヤー(揚げ器)・排煙ダクト・カウンター設備」の状態が評価を大きく左右します。適切にメンテナンスされた居抜き設備は、単純な帳簿価額より高く評価されることもあり、逆に老朽化が激しければ買い手の解体・改修コストとして減額交渉の材料になります。

相場感を理解した上で、次は実際に売却を検討しているオーナーが事前に取り組むべき準備を解説します。


売り手向け:売却前に必ず取り組む準備

財務の見える化と帳簿整備

売り手が最初にすべきことは、過去3期分の決算書・確定申告書の整理です。買い手は利益の安定性・推移を最も重視します。「売上はあるが帳簿がない」「現金商売で記録が曖昧」という状態は、交渉において著しく不利になります。売却を考え始めた時点で、税理士と連携し財務の見える化を進めましょう。

属人性の排除と運営マニュアルの整備

前述のとおり、「オーナーがいなければ回らない店」は評価が下がります。串の仕込み工程・ソースの調合・開店・閉店オペレーションをマニュアル化し、スタッフだけで運営できる状態を作ることが企業価値向上の鍵です。売却準備期間として最低6〜12ヶ月の余裕を持つことを推奨します。

賃貸借契約の確認と大家への事前打診

飲食店の居抜きM&Aで最も頻発するトラブルが、賃貸借契約に関する問題です。多くの賃貸借契約には「無断での権利譲渡禁止」の条項が含まれており、大家の承諾なしにM&Aを完結させることはできません。事前に大家との関係を良好に保ち、必要であれば早めに相談することがスムーズなクロージングへの近道です。

また、買い手が新たに賃貸借契約を締結する場合、敷金の扱い(返金か引き継ぎか)も明確にしておく必要があります。

営業許可の移譲不可という大前提

飲食業における営業許可(食品衛生法に基づく営業許可)は、個人・法人を問わず第三者への譲渡ができません。買い手は取得後、改めて保健所への申請・施設検査を受け、新たな営業許可を取得する必要があります。この手続き期間(通常2〜4週間)を考慮した上でスケジュールを設計することが重要です。

売却準備の全体像をつかんだところで、今度はM&AプラットフォームやBtoBサービスを活用した実際の進め方を見ていきます。


買い手向け:デューデリジェンスとシナジー創出

飲食店DDの重点ポイント

串かつ屋のM&Aにおけるデューデリジェンス(DD)は、一般的な企業買収と異なり、現場確認の比重が非常に高いのが特徴です。書類上の数字と実態の乖離が生じやすい業種であるため、以下の点を重点的に確認してください。

確認項目 主なリスク
賃貸借契約(残存期間・更新条件) 短期での立ち退きリスク
設備の状態(フライヤー・ダクト) 取得後の修繕コスト
従業員の雇用契約・引き継ぎ意向 キーパーソン離脱リスク
食材仕入先との取引関係 品質・仕入価格の変動リスク
過去3期の売上・利益推移 業績の安定性確認

特に調理スタッフの引き継ぎは慎重に確認すべき点です。ベテランの串師(揚げ担当)が辞めてしまえば品質が一変し、既存客が離れるリスクがあります。クロージング後の雇用条件・インセンティブ設計を買収前から検討しておくことが重要です。

シナジー創出の具体的アプローチ

  • セントラルキッチン化:仕込み工程を集約し、複数店舗への食材供給を一元化することで原価率を3〜5%改善できる可能性がある
  • POS・予約システムの統合:データに基づくメニュー改善・ピーク管理が可能になる
  • ブランド転換の可否検討:既存の屋号を活かすか自社ブランドへ転換するかは、顧客属性・地域認知度を踏まえて慎重に判断する

M&Aマッチングサービスの活用法

オンラインマッチングサービスの現状

近年、スモールM&Aの普及とともに、インターネット上でM&A案件を売買できるオンラインマッチングサービスが急速に整備されてきました。個人オーナーが数百万〜数千万円規模の飲食店案件を、仲介手数料を抑えながら売却・購入できる環境が整いつつあります。

サービス選びの3つのポイント

  1. 飲食・串かつ特化案件の掲載数:サービスによって得意業種が異なります。飲食業態の案件が豊富なサービスを選ぶことで、相場感の把握と比較検討がしやすくなります。

  2. 専任アドバイザーの有無:セルフマッチングタイプと、アドバイザーが介在するタイプがあります。賃貸借・営業許可など複雑な交渉が伴う飲食M&Aでは、専門家のサポートが受けられるサービスを選ぶことを強く推奨します。

  3. 手数料体系の透明性:成約報酬型(レーマン方式)・月額課金型など手数料体系は様々です。小規模案件では成約金額に対して5〜10%程度の手数料が発生するケースが多く、あらかじめ手取り金額を試算した上で利用を判断しましょう。

サービス利用前に準備すべきこと

売り手であれば「売却理由・希望価格・賃貸借条件の概要・財務サマリー」を整理したノンネームシート(匿名概要書)を用意することで、交渉を有利に進められます。買い手であれば「投資予算・希望業態・運営方針の概要」を明確にしておくことで、案件マッチングの精度が高まります。

マッチングサービスの活用で候補案件を絞り込んだら、最後に成功のための要点を整理しましょう。


まとめ|串かつ屋M&Aで成功するための3つのポイント

串かつ屋のM&A・居抜き・事業承継を成功させるカギは、以下の3点に集約されます。

  1. 相場感の正確な把握:年買法2.5〜4倍・EBITDA4〜6倍という業界水準を基準に、立地・設備・財務状況を加味した現実的な価格設定を行うこと

  2. 業種特有リスクの事前解決:営業許可の再取得手続き、賃貸借契約の大家承諾、キースタッフの雇用継続——この3点を早期に整理することがクロージング成功の分岐点となる

  3. 専門家との連携:飲食M&Aは不動産・税務・労務・許認可が複雑に絡み合います。マッチングサービスの活用と並行して、経験豊富なM&Aアドバイザーや税理士と早めに連携することで、想定外のトラブルを未然に防ぐことができます。

後継者不在で廃業を考えているオーナーにとって、M&Aは「閉める」以外の有力な選択肢です。一方、買い手にとっては居抜きによるコスト効率の高い多店舗展開の機会でもあります。双方にとってWin-Winとなる取引を実現するために、ぜひ本記事を実務の参考としてお役立てください。


本記事の数値・相場感はスモールM&A市場の一般的な傾向を示したものであり、個別案件の評価を保証するものではありません。具体的な案件については、専門のM&Aアドバイザーにご相談されることを推奨します。

よくある質問(FAQ)

Q. 串かつ屋のM&Aの相場はいくらですか?
年商1,500万〜3,000万円が主流で、営業利益の2.5〜4.0倍が年買法での相場です。立地や営業年数により変動します。
Q. 居抜き取得と新規出店ではどちらが安いですか?
居抜き取得は500万〜1,500万円程度、新規出店は1,500万〜3,000万円以上必要です。コスト効率で居抜きが有利です。
Q. 買い手はどのような点を重視しますか?
立地・商圏の質、既存顧客層と営業年数、有形資産(設備)の状態を最重視します。オーナーの技術は割引要因になります。
Q. 串かつ業態の利益率はどのくらいですか?
立地・運営の効率により異なりますが、概ね15〜25%程度が標準的な水準とされています。
Q. 後継者がいない場合、どうすればよいですか?
M&AやFC企業への売却、事業承継などが選択肢です。関心の高まりで買い手も増えており、閉店以外の道があります。

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